音響測定解説(3) RT60(残響特性)

測定操作


大まかな流れ

  1. 部屋の適当な位置にマイクを立てます。とりあえず、いつものリスニングポジションがよいでしょう。
  2. SpectraSOFT<Rec>ボタンをクリックし、アナライザーをRecorder(記録)モードでスタートしてから被測定信号を出力します。
  3. 数秒後にSpectraSOFT<Stop>ボタンをクリックし、アナライザーを停止します。
  4. SpectraSOFTに記録された信号を解析し、残響時間を観察します。

 

実際の手順

実際の操作手順を説明します。

NOTE: メニュー及び操作の一部は、SpectraPLUS/PRO/LAB」のモデル間で差異があります。ここでは整理の都合上「PLUS」モデルで説明しますのでご注意下さい。

SpectraSOFTの設定

SpectraSOFTの各メニューを下表の様に設定します。ただ、「PLUS」モデルを使用する場合は、提供する定義(Configuration)ファイルを使うことによって下表の設定を自動的に行うことができます。

適 応 メニュールート 選択パラメター
動作モード <Mode> Recorder
表示ビューグラフ <View> Time Series
サンプリングレート <Otion>-<Settings> 44,100 Hz
FFTサイズ <Otion>-<Settings> 4096(適時)
デシメーションレシオ <Otion>-<Settings> 1
スムーシング <Otion>-<Settings> Uniform
アベレージング <Otion>-<Settings> 1
サンプリングフォーマット <Otion>-<Settings> 16 bit Mono

定義ファイル「rt60.cfg」の圧縮ファイルRT60.zipはこちらからダウンロードしてください。「rt60.cfg」の保存先は任意ですが、既定フォルダ「Drv:\Specplus\Config」を指定することをお勧めします。このファイルを次の手順で呼び出します。

  1. SpectraPLUSメニューバーの<Config>をクリックします。
  2. <Load Configuration>を選択するか、<F8>キーを押します。
  3. Load Configuration」ダイアログから「rt60.cfg」ファイルを保存したフォルダ選択し<OK>を押します。
マイクの設定

部屋の適当な位置にマイクを立てます。とりあえずリスニングポジションがよいでしょう。マイクを内蔵しているノートパソコンの場合は、マシン本体ごと設置することになりますが、できるだけスクリーンパネルの反射の影響を受けないようにマイクを露出して下さい。

測定手順
  1. SpectraSOFT<Rec>ボタンをクリックし、アナライザーをスタートします。この時アナライザーを停止するまでの間は、物音(環境雑音、ノイズフロア)はより低いことが望まれます。
  2. 部屋の中央で、できるだけ大きく一度だけ手を叩きます。
  3. 2、3秒経過したら、SpectraSOFT<Stop>ボタンをクリックしてアナライザを停止します。
  4. 下図のようなグラフが表示されるはずです。

    Fig. 3-1
     
  5. ズーム機能を使い、Fig.3-2のように解析対象位置を適時拡大します。拡大操作はアイコンバーの虫メガネアイコンで行えます。 ここでは二倍拡大機能の「IN 2x」アイコンを何回かクリックしてみましょう。拡大中に表示位置がスライドしたらスクロールボタンで調整します。

    Fig. 3-2
     
  6. 直線的に減衰している部分のレベルの高い位置で<Ctlr>キーを押しながら左ボタンをクリックします
  7. すると、グラフの上と左のカーソルボックスに「0.0sec/ 0.0dB」が表示されます。この位置が相対基準位置となります。
  8. そして、ボタンを押したまま減衰している傾斜に沿ってマウスをドラッグします(Fig.3-2参)。
  9. グラフ左のカーソルボックスが「-20dB」を示す位置を探し、この時グラフ上のカーソルボックスに表示されるタイム(Sec)を記録します。この時間をRT(20)値と呼びます。
  10. 60(dB)減衰点は20(dB)減衰点の3倍延長上に位置しますから、Fig.3-2の場合は「0.043093 x 3 = 0.129279 sec」がRT60 = 残響値となります。

    NOTE: 通常の屋内で60(dB)の減衰(ダイナミックマージン)環境を確保するのは困難ですから、一般的には2030(dB)減衰値を利用するRT(20),RT(30)法を使用します。
  11. この作業を部屋の何箇所かで行い、その値を記録して平均値を求め、代表残響値とします。また、表計算ソフトなどを利用して測定ポイントデータをグラフ化すると、部屋全体の残響、定在波状態を視覚的に確認することができます解説(4)参

NOTE残響特性は減衰傾斜角の捉え方によって差異を生じます。判断はオペレーターの習熟度に依存します。上記の操作では拍手音を使用していますので、そのスペクトルは中域エネルギーのみです。スペクトラムは「SpectrumViewをオンすれば観察できます。オーディオ全帯域を含む特性を観る場合は、下記の「ピンクノイズ信号を使う」を参照して下さい。

 

ピンクノイズ信号を使う

前述のケースでは簡便さを考慮し、信号源として「拍手」を使用しましたが、本来は、すべての周波数成分を均等に含む信号を使うことが望まれます。そのため、一般的にはピンクノイズ信号が使われます。もし、オーディオ装置とテストソース(CD、レコードなど)を用意できれば、前出「手順2」の場面でピンクノイズ信号を再生してください。

また、SpectraSOFTは種々の信号を出力するシグナルジェネレータを内蔵していますので、サウンドカード仕様が適合すれば、ピンクノイズ信号の出力を同時に行うこともできます。詳細情報はこちらです。

操作手順は...

  1. SpectraSOFT<Rec>ボタンをクリックし、アナライザーをスタートします。
  2. ピンクノイズを数秒再生し、停止します。この測定では「1/101/100」秒のタイムを解析するわけですから、ここでの停止操作は瞬間で完了しなければなりません。そのためボリュームコントロール操作ではなく、ミューティングスイッチなどを使用して切断する必要があります。
  3. 2、3秒経過したら、SpectraSOFT<Stop>ボタンをクリックして停止します。
  4. 以下は前出と同様です。

 

更に本格的に進むと...

以上はすべての周波数成分を含む信号を使った、すなわちワイドバンドの残響特性値です。 しかし、残響値は周波数毎に異なります。たとえばよく、「この部屋はブーミーだ」と云いますが、これは低い周波数帯で問題が発生していることを表しています。解説(4)ではこの解析方法に触れます...


ページTOP解説1解説2解説4測定と分析TOPST-Top Page